夕日と紅毛城が歴史を紡ぐ 台湾・淡水

台湾淡水の夕日

大航海時代に歴史の表舞台に登場。
大清帝国が対イギリス・フランスのアロー戦争に負けたことにより開港した、台湾北部の港町「淡水(Tamsui)」。

異国情緒がいまも漂う、台湾・淡水を訪れました。

淡水 Tamsui

淡水の夕日

台北中心部を流れる淡水河を河口に向かって北上すること約16km、新北区(New Taipei City)にある港町「淡水(Tamsui)」。
その歴史は古く、17世紀初頭まで遡ります。

1628年、スペインが丘の上に「サント・ドミンゴ城(現:淡水紅毛城)」を築き、淡水の歴史が動き始めました。
台湾南部の都市台南の安平にゼーランディア城(現:安平古堡)を築いたオランダ軍が、淡水からスペインを追い出してアントニオ城を建設。

安平古堡(ゼーランディア城) 安平古堡(ゼーランディア城)|Fort Zeelandia, 台南

1661年に鄭成功がゼーランディア包囲戦でオランダを撃破すると、淡水のオランダ軍も撤退(オランダはその後ポルトガルの領土であったマレーシアのマラッカを獲得)。
ただし、鄭氏台湾の時代は長くなく、台湾は清の時代へ。

19世紀、アヘン戦争でイギリス、アロー戦争でイギリス・フランス(他)に敗れた清は天津条約(つづいて北京条約)と不平等条約を締結し、台南(安平)や高雄(打狗)とともに淡水が開港します。

開港後、税務司官邸、紅毛城の隣にはイギリス領事館が建てられました。

日本統治時代を経て淡水の港は縮小。
現在は台湾の歴史を伝える観光地として台北から多数の観光客が訪れます。

淡水の観光地図(マップ)

淡水の見どころは、淡水河に沿うように点在しています。
淡水駅から河口のフィッシャーマンズワーフまでの距離は3km以上あるため、徒歩だけでの見学は厳しそうです。

個人的に推奨するプランは、淡水駅から淡水河沿いや淡水老街をぶらり街歩きしつつ、多田榮吉故居の裏あたりから異国情緒漂う町並みを散策。
淡水紅毛城または滬尾炮台まで見た後、夕方には路線バスに乗ってフィッシャーマンズワーフへ…。

淡水駅周辺・淡水河沿い

淡水駅

MRT淡水信義線(R)の最北端、淡水駅。

淡水河を挟んだ向かいにそびえるは観音山。台北101の展望台からもはっきりとその稜線を確認できる山です。

観音山の麓である八里(バーリ)へ渡る船が運行しています。
今回は省きましたが、時間をつくって八里だけをゆっくり散策してみたいものです。

淡水河沿いはのんびりとした雰囲気が流れています。

淡水河沿いから一本内側に入った通り淡水老街(Tamsui Old Street)はお土産屋さんや海産物の屋台で賑わいを見せており、対照的です。

淡水礼拝堂

淡水礼拝堂

宣教師George Leslie Mackay(マッカイ、馬偕)の台湾における布教60周年を記念して1933年に建てられた教会。

小白宮(前清淡水関税務司官邸)

淡水の小白宮

淡水の開港後、税関で職務を行う人員の住宅を確保するために購入した淡水関税務司官邸
その美しさからLittle White Houseとも呼ばれ、通称は小白宮

イギリスがアジア各地で建築していたコロニアル様式の建物で、アーチ型の回廊がとても美しい。

淡水の小白宮 アーチ型の回廊
前清淡水関税務司官邸

建物の特徴のひとつが、土台を高く取り基礎部分に通気口を設けている点です。
現代の日本の住宅では基礎から換気を取るのが一般的ですが、当時では珍しい試みだったのかもしれません。

前清淡水関税務司官邸

淡水紅毛城

淡水紅毛城

1628年にスペイン人が建築した木造のサントドミンゴ城。オランダがスペインを追い出した後に再建した建物がアントニオ城で「紅毛=オランダ人の髪の色」から紅毛城と呼ばれるようになります。

鄭成功が台南安平のゼーランディア城包囲戦でオランダを撃破すると、オランダ人は紅毛城を破壊して撤退。

清朝期に淡水が開港するとイギリスが敷地を99年租借し、1891年にはコロニアル様式の英国領事館が建てられました。
現地のパンフレットには、紅毛城の所有権は戦後にオーストラリア、アメリカと移り変わり、1980年に台湾の所有となったと記載があります。

紅毛城の前に並ぶ9つの旗。
1628年にサント・ドミンゴ城を建築したスペインから、オランダ、鄭氏台湾、清、イギリス、日本、オーストラリア、アメリカ、中華民国。

淡水の旧英国領事館

敷地内に佇む旧英国領事館。

淡水の旧英国領事館
淡水の旧英国領事館のレンガ彫刻

レンガの中に描かれている彫刻。
中央の文字列は「VR」で「Victrria Regina」の略、四隅の数字「1891」は建物が完成した年です。

小白宮(前清淡水関税務司官邸)と同様、基礎には換気のための通気口が設けられています。
通気口の形状は中国の古銭をモチーフにしており、中国式の建物によく見られる形状です。

淡水の旧英国領事館
淡水の旧英国領事館の床タイル
淡水の旧英国領事館の床タイル

客間、ホール、ダイニングルームの床に貼られている英国製のタイル。

淡水の夕日

淡水の夕日
紅毛城の階段を駆け下り、海沿いで見た夕日

紅毛城の階段を駆け下り海沿いに出ると、夕日はすでに低い位置にある。
しまった、と思いつつもバスに乗り込み、西のフィッシャーマンズワーフを目指します。

台湾淡水の夕日

フィッシャーマンズワーフのバスを降りた場所から。
バス停留所からは距離があります。
今ならまだ間に合うか?

淡水情人橋から望む夕日

情人橋の上から。
雲ひとつない空を、朱く染めながら夕日が沈みます。

台湾淡水の夕焼け
淡水のマジックアワー

夕日が沈んでからの約30分間、マジックアワーのグラデーションも美しい。

淡水フィッシャーマンズワーフのマジックアワー

淡水の場所・行き方・アクセス

淡水駅までのアクセス方法

淡水の最寄駅はMRT淡水信義線(R)の最北端の終点駅、淡水駅(R28)です。
台北主要部から淡水駅までの移動所要時間、料金目安は以下の通り。

台北車站〜約48分NT$50.00
台北101站〜約61分NT$55.00
松山站〜(中山站で乗り換え)約69分NT$75.00

温泉で有名な北投(R22)止まりの電車があるので、ご注意ください(わたしは北投止まりの電車に気づかず、折り返し電車で台北方面に引き返してしまいました)。

淡水フィッシャーマンズワーフまでのアクセスは路線バスが便利

淡水の路線バス紅26線
淡水の路線バス 紅26線

淡水駅、紅毛城、滬尾(コビ)炮台、淡水フィッシャーマンズワーフ(漁人碼頭)間のアクセスは路線バスが便利です。

淡水 紅26線バスの路線図
紅26線の路線図(※クリックで拡大します)
淡水 836線バスの路線図
836線の路線図(※クリックで拡大します)

MEMO
上記の紅26線、836線の路線図は淡水駅バスターミナルで撮影したものです。

淡水のバス運賃は「乗車時に支払うシステム(上車收費、Pay On Boadingがその意)」です。
料金は一律NT$15でした。
ICカードの悠遊カードも使えます。

おわりに

西側が開けているためか、日中と西日が差し込む夕方とではまったく違う表情に変わる淡水の町。
400年近い歴史を持つ地から西の水平線に沈む夕日。
この夕日だけは過去も今も変わらないであろうということを思うと、情趣を感じます。

もあし淡水の歴史的建造物も見るなら午前中から、夕日が沈んでマジックアワーを堪能できる夜まで一日滞在するのがおすすめです。

淡水の天気・気温・降水量

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