サグラダファミリア(Basílica de la Sagrada Família)の顔ともいえる「生誕のファサード」を、写真を交えて振り返ります。
生誕のファサード Façana del Naixement
バルセロナのサグラダファミリアで「イエスの誕生」を表現したファサード、生誕のファサード(Façana del Naixement)。
3つのファサードの中で、唯一建築家アントニ ガウディの存命中に着手したものであり、「ガウディの思考に最も限りなく近い」ファサードです。
サグラダファミリアは、1926年に建築家ガウディが亡くなり、スペイン内戦(1936〜1939年)時に図面がすべて燃やされてしまったために、正確な図面がありません。
ガウディの思考を深く理解・共有していたお弟子さん・石工職人さんにより「すべて石造りで完工」したファサード。
それが、生誕のファサードです。
生誕のファサードは日本人彫刻家 外尾悦郎氏が石工職人として長年従事。
外尾さんの著書『ガウディの伝言』は、バルセロナ旅行へ行く前に熟読をおすすめします。
生誕のファサードの見どころ
生誕のファサードは3つの扉に分かれています。
- 希望の扉口(左)
- 慈愛の扉口(中央)
- 信仰の扉口(右)
希望の扉口 Portal of Hope |
1.マリアとヨセフの結婚式 The wedding of Mary and Joseph |
2.エジプトへの逃避 The flight to Egypt |
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3.幼児虐殺 The massacre of the Innocents |
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慈愛の扉口 Portal of Charity |
4.聖母戴冠 The coronation of Mary |
5.受胎告知 The annunciation of the Virgin Mary |
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6.キリスト降誕 The nativity |
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7.東方三博士の崇拝 The adoration of the Magi |
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8.羊飼いの崇拝 The adoration of the shepherds |
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信仰の扉口 Portal of Faith |
9.聖燭祭 The presentation of Jesus in the temple |
10.法律学者と議論するイエス Jesus preaching in the temple |
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11.聖エリザベトを訪問する聖母マリア Mary’s visit to Elizabeth |
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12.大工として働く若き日のイエス Jesus working as a carpenter |
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13.生命の木 糸杉 The cypress, the tree of life |
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亀の雨樋 | |
生誕の門の扉 |
Portal of Hope 希望の扉口
1.The wedding of Mary and Joseph マリアとヨセフの結婚式
ストーリーの順番から、まずは希望の扉口。
「マリアとヨセフの結婚式」
氷柱をデザインした破風は、季節を表現。
その上で、構造的な役割も持たせる。
2.The flight to Egypt エジプトへの逃避
ユダヤの支配者ヘロデ王が幼少のイエスを殺害しようとしていることを知り、エジプトへ逃げるイエスを抱くマリアとヨセフ。
「エジプトへの逃避」
3.The massacre of the Innocents 幼児虐殺
イエスキリストの誕生を恐れたヘロデ王が2才以下の幼児をすべて殺害、「幼児虐殺」
Portal of Charity 慈愛の扉口
4.The coronation of Mary 聖母戴冠
慈愛の扉口の上部にある「聖母戴冠」。
5.The annunciation of the Virgin Mary 受胎告知
中央上部に「受胎告知」の彫刻。
その下には、左右に楽器を奏でる天使6体、中央にはその音色に合わせて歌う9人の家族の像。
これらの天使像15体は、外尾悦郎さんが彫ったものです。
その歳月、16年。
外尾さんが15体の天使像の中で最初に掘った、ハープの天使像。
天使の持つハープに弦が見えますか?そこにあるはずのない、弦。
6.The nativity キリスト降誕
ベツレルムの星と天使の下に「キリスト降誕」。
7.The adoration of the Magi 東方三博士の崇拝
新しいユダヤの王の誕生をベツレヘムの星によって知らされ導かれた、東方三博士。
8.The adoration of the shepherds 羊飼いの崇拝
イエスの誕生に立ち会う、羊飼い。
Portal of Faith 信仰の扉口
9.The presentation of Jesus in the temple 聖燭祭
「聖燭祭」
10.Jesus preaching in the temple 法律学者と議論するイエス
法律学者と議論するイエス。
11.Mary’s visit to Elizabeth 聖エリザベトを訪問する聖母マリア
聖エリザベトを訪問する聖母マリア。
12.Jesus working as a carpenter 大工として働く若き日のイエス
大工として働く若き日のイエス(右側)。
The cypress, the tree of life 生命の木 糸杉
中央の慈愛の扉口の上部には白い鳩が舞う生命の木、糸杉。
糸杉の頂点にイエス キリストを象徴する赤い十字架。
糸杉の裏には鉄筋が一切入っていない石橋が見えます。
生誕の塔を訪問の際を訪れる、鉄筋が一切入っていない空中に浮かぶ石橋。
糸杉の下には「Jesus Hombee Salvador(救世主イエス)」のJHSの文字。
糸杉とJHSの文字の間を見ると、白いペリカンの親子がいます。
遠くからは見えるものの、近くから見上げると見えなくなってしまうペリカンの親子。
このあたりの考察も、外尾さんの著書にまとめられています。
一見の、通りすがりの観光客では到底辿り着くことができない。
何十年も暗闇と静寂の中で石を掘り続けた職人さんの考察。痺れます。
亀の雨樋
慈愛の扉口の左右にある柱。
柱は雨樋の役割を果たしており、雨の日は柱を通った雨水が亀の口から吐き出される設計。
雨樋の下にある亀も工夫が凝らされています。
北の山側はリクガメ、南の海側はウミガメです。
雨樋の亀には「サグラダファミリアをゆっくりと休まずに作り続けていこう」という意味が込められているそうですが…。
昨今は、サグラダファミリアの工期を短縮するために、コンクリートが使われてしまう展開に。
石工さんが一生懸命に掘って作った亀の姿が、何とも皮肉に映ります。
生誕の門の扉
生誕の門の扉のデザインも、外尾さんによるもの。
生誕の門にあって不自然ではなく、さらには生誕の門に描かれていなかった者たちが表現されています。
その草むらの扉を抜け、森の中へ。
夜の水面に映る…鏡張りのサグラダファミリア from ガウディ広場