ハルシュタット塩坑 ケーブルカーで上り、滑り台で下り、トロッコで脱出|Salzwelten, Hallstatt

ハルシュタット塩坑の滑り台

先史時代のBC2000年頃から人間が定住していたというハルシュタット。
ではなぜ、ハルシュタットに人間が定住できたのか?

ハルシュタットの町の裏手にある世界最古の岩塩坑「ハルシュタット塩坑(Salt mine)」にその秘密がありました。

ハルシュタット塩坑 Salzwelten

ハルシュタット塩鉱

ハルシュタット塩鉱

雄大な山に抱かれた湖畔の街、ハルシュタット(Hallstatt)。
ハルシュタットの周辺では多くの石斧が採掘されており、鹿の角でできた鶴嘴(pickaxe)の放射性成分を分析したところ、鶴嘴が使用された時代の推定は「約7000年前」。

我々が想像するよりも遥かに昔から人類が住んでいたハルシュタット地域。
しかし、人類はハルシュタットの地に定住するにあたり、ひとつの問題に直面します。
それは「夏季に食物をどう保存するか?」

その答えが、塩。
ハルシュタットといえば、白鳥が波の輪をつくる長閑なハルシュタット湖に目がいきますが、人類が定住するきっかけとなりその歴史を紡いできたのは裏手にある山。
ハルシュタット岩塩坑(Salzwelten)です。

ハルシュタット塩鉱

作業着を着た坑夫が木製の滑り台に身体を乗せ、地中の暗がりの奥の奥まで滑り降りる。
当時の坑夫のように滑り台を滑り、ハルシュタットの長い歴史を学ぶことができます。

ハルシュタット塩坑 ケーブルカー

オーストリア・ハルシュタットの地図(※Click to enlarge)

標高840mのハルシュタット岩塩坑までのアクセス方法は、ケーブルカーまたは徒歩。
上記のマップによれば徒歩の場合はハルシュタットの町から片道1時間とのことで、ケーブルカーでのアクセスが無難でしょう。

ハルシュタット塩鉱 ケーブルカー

ハルシュタット塩鉱 ケーブルカー

ハルシュタット塩坑ケーブルカーの料金表

ケーブルカーと岩塩坑見学のセットプランもあります。
ケーブルカーの営業時間などの詳細情報はダッハシュタインの公式サイトにてご確認ください。

dachstein.salzkammergut.at/en/oesterreich-poi/detail/430003930/hallstatt-salt-mine-railway.html

展望台

ハルシュタット岩塩坑の展望台

ハルシュタット岩塩坑の展望台

ハルシュタット岩塩坑から見るハルシュタットの町

12m前方に突き出た展望台から。
ハルシュタットの町を見おろす。
プロテスタント教会、マルクト広場、ハルシュタット博物館がよく見えます。

ハルシュタット岩塩坑の展望台

ハルシュタット岩塩坑の展望台

中央にはオーバートラウンの村。
白い霧に覆われた右手の山は「クリッペンシュタイン」。

展望台の手前に建つクリーム色の外壁をした建物は、ルドルフ塔。
14世紀以降、岩塩坑の経営責任者が住んでいた建物です。

岩塩坑の森

ルドルフ塔の北側。
1846年、労働者がこのエリアにて人骨と出土品を発見。
後に「Greve field of the Early Iron Age」と呼ばれるエリアで発見されたのは、紀元前8世紀〜4世紀のハルシュタット人。

ハルシュタット岩塩坑で発見された人骨

当時の経営責任者ヨハン ゲオルグ ラムザウアー(Johann Georg Ramsauer)が発掘調査を開始すると、先史時代の墓場を次々と発見し採掘していきます。
林道の途中にある建物の中には、その時に発見された人骨と身に付けていた豪華な埋葬品が展示されていました。

この墓地の採掘をきっかけに、紀元前800〜500年の時代の中央ヨーロッパ鉄器時代の名称は「ハルシュタット文化」に。
ハルシュタット博物館の記述によれば、当時は古代ギリシャと通商関係があったとか…。

大量の豚肉を塩漬け、ベーコンにするために作られた小屋があったと推定されている場所。
この小屋で作られたベーコンが、寒い冬を越すための貴重な食料に。

岩塩坑 見学ツアー

ハルシュタット岩塩坑

ハルシュタット塩坑 作業服(着替え)

大量の人骨が発見された「墓地の森」を抜け、ハルシュタット塩坑ツアーの建物へ。
岩塩坑見学ツアーの所要時間は約1時間。

大きな手荷物はクロークに預け、身軽な服の上から作業服を着用。
英語ガイドさんと共に出発です。

ハルシュタット塩坑

ハルシュタット塩坑

ハルシュタット塩坑

ハルシュタット塩坑

ハルシュタット塩坑

ハルシュタット塩坑

地下奥深くへ降りるため、木製の滑り台で滑走します。
滑り台は坑夫たちが実際に使用していたもの。

 

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この滑り台、楽しくないわけがない。
当時の坑夫の方々は命がけでお仕事されていたと思いますので、楽しいとかそんな悠長なことは言ってられなかったと思いますが…。
ところで、もう一度上に上がってはダメですか?

ハルシュタット塩坑 塩の結晶

巨大な塩の結晶。
現代では簡単に手に入る塩も、先史時代は冬を越えるため・生き延びるために欠かせなかったもの。
当時の人たちがライトアップされた塩の結晶を見たら、どんな笑顔を見せてくれるのでしょうか。

ハルシュタット塩坑の滑り台

滑り台、再び。

2箇所目の滑り台には、記念撮影用のカメラが付いています。
ツアー終了後に写真を購入可能。
写真には、滑り台を滑走する際のスピードまで印字されていました。

ハルシュタット塩坑の滑り台

ハルシュタット塩坑 青銅器時代の塩採掘用の斧

麓のハルシュタット博物館にも展示されていた、青銅器時代の塩採掘用の斧。
紀元前2000年頃に銅の製造法が発明されたのをきっかけに、大きな塩を採掘することが可能に。
ハルシュタット周辺に定住者が増えるきっかけとなりました。

ハルシュタット塩坑 青銅器時代の生皮の靴

動物性の皮を使った靴。
当時は視界も足元も悪条件だったでしょうから、革靴ではかなり大変だったであろうことが想像できます。

ハルシュタット塩坑のトロッコ

ハルシュタット塩坑のトロッコ

最後は全員でトロッコに乗車。
外へ脱出します。

ハルシュタット塩坑の場所・行き方・アクセス

マルクト広場からケーブルカー乗り場まで徒歩12分。
ケーブルカー山上駅から岩塩坑まで徒歩10分。

おわりに

ハルシュタット展望台

歴史の勉強にもなり、要所要所に心臓の鼓動が早くなる仕掛けがあるので楽しい。

また、ハルシュタット塩坑については「観光地」としてのレベルの高さを感じました。
その地の歴史をアトラクションを交えて学べるので、年齢を問わず楽しめる。
オーディオガイドは多言語対応、スマホアプリで聴ける。
アプリなので日本に帰ってから、撮りためた写真を見ながら再度じっくり学ぶことも可能。

風光明媚なハルシュタット。
ハルシュタットは湖だけではありません、塩の山があります。
ハルシュタットの歴史も、ケーブルカーの山頂駅・展望台からの風景も素晴らしい。
ですが、お時間があればぜひ岩塩坑へ!

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