北海道十勝エリアにある北海道ガーデン街道のひとつ、十勝 千年の森(Tokachi Millenium Forest)へ。
十勝 千年の森 Tokachi Millennium Forest
十勝エリア西部の上川郡清水町にある、十勝 千年の森(Tokachi Millennium Forest)。
道北・十勝エリアに全8ヵ所ある「北海道ガーデン街道」のひとつです。
英国の権威ある団体のアウォードを受賞したガーデン、木漏れ日の中でせせらぎが聴こえる森、日高山脈をバックにした壮大なランドスケープ、高台からの眺望まで楽しめる広大な空間になっており、北海道ガーデン街道の中では良い意味で毛色が違います。
コンセプトが異なる各エリアにはアート作品が散りばめられており、屋外美術館のような顔も併せ持ちます。
この地に伝わるアイヌ神話をテーマにした彫刻作品、土地が持つ記憶を紡ぐ石を敷き詰めた石畳のアプローチなど、ガーデンや森の散策以外にも見どころ多彩。
始まりは1990年代。
開拓期に原始の森を開拓したのちに放置され、クマササが生い茂っていた二次林を間伐。
十勝毎日新聞社が「カーボンオフセット」のために育林を始めたのが原点です。
この理念に共感した、札幌を拠点とする高野ランドスケープデザイン、英国のガーデンデザイナー ダン・ピアソン氏が手を組み、2008年に総面積400haにも及ぶ壮麗なガーデンが誕生しました。
エントランスフォレスト Entrance Forest
ビジターセンターからつづく林道。
ミズナラ、ハルニレ、ヤチダモなどの落葉高木が生い茂る中を、小川のせせらぎを聴きながら歩きます。
アースガーデン Earth Garden
元は平坦だった草地を、盛土と切土で斜度45度の芝生の法地に造成。
複数種の芝は、歩きやすさを重視するために長さを「27cm」に統一しています。
セグウェイに乗って千年の丘(後述)へ向かうガイドツアーは人気アクティビティ。
日本国内のセグウェイコースの中でも高低差が大きいために最難関コースとの呼び声もあるようですが、実に多くの方が参加されていました。
天候が良ければ、背後には日高山脈の山々が連なります。
この場所は日高山脈が白雪をかぶった時期に訪れるのも良さそうです。
十勝千年の森は、花崗岩の一種である麦飯石(ばくはんせき)の上に乗っています。
麦飯石で描いたアート作品、カムイのサークル。
メドウガーデン Medow Garden
英国のガーデンデザイナー ダン・ピアソン氏が、十勝の大自然からインスピレーションを得て手がけた、メドウガーデン。
自然植生を元にした「ナチュラリスティック・プランティング」という手法が取られており、3つのエリア「ウッドランド(森)」「ウッドランド・グレイド(林緑)」「メドウ(草原)」の風景・雰囲気を取り入れることを目的としています。
この手法を取り入れるのは日本国内では十勝千年の森が初めてだそうで、英国ガーデンデザイナーズ協会(SGD)が主催する2012年のアワードで、アース・ガーデンとともに大賞(Grand Award)・国際賞(International Award)に選ばれています。
人為的な要素を除するために、コンピュータの乱数表によって植物パターンを選定。
園路では歩を進めるたびに前景、中景、後景が入れ替わります。
メドウガーデンに隣接するファームガーデン。
堆肥には庭で剪定した植物、野菜や果物の残渣、落ち葉、馬ふんを使用し、支柱は園内の間伐材を使っているとのこと。
ファームガーデン Farm Garden
山羊が芝生の中をトコトコと駆け回るゴートファーム。
園内のヤギチーズ工房では、生乳からチーズをつくっています。
山羊のエサやり体験も。
キサラ Kisara
十勝千年の森の中間付近にあるレストハウス、キサラ。
アイヌ神話に由来する休憩所には、軽食やミネラルウォーターの販売があります。
フォレストガーデン Forest Garden
十勝千年の森の、最深部にある森。
「何も持ち込まない、何も持ち出さない」を徹底した森の中には、森の麦飯石と間伐材でつくった寛ぎのオブジェがあります。
札幌を拠点とする高野ランドスケーププランニングは、大雪森のガーデン、札幌では旭山記念公園、滝野すずらん公園こどもの谷、海外ではマレーシアの通称ブルーモスクがあるシャーアラム中央公園、台湾東部宜蘭県の羅東運動公園などの設計を手がけています。
千年の丘 Millennium Hill
千年の丘の頂上から望む、東面の眺望。
十勝千年の森の広大な敷地の遥か彼方には、帯広市街が見えます。
「北海道らしい景色」といっても、人それぞれ異なるイメージを脳内に投影するかもしれませんが、こと「十勝らしい景色」となると、ある一定の範囲のなかに収斂されそうです。
ここからの景色は、近くにある清水円山展望台と同様に「十勝らしい景色」の代名詞ともいえるのではないでしょうか。
案内では「キサラから往復約45分」とあるものの、道中や頂上での休憩時間を加味すると、「往復約1時間」みておいた方が良いでしょう。
十勝 千年の森の場所・行き方・アクセス
マップコード:608 059 830*78
十勝清水ICから車で13.2km、約17分
清水円山展望台から車で4.9km、約8分
おわりに
このガーデンの起源が「十勝毎日新聞の育林」という点が良いですね。
そこが芯のある源流であるからこそ、ガーデンデザイナーやガーデナーの方々が共感し、北海道の中でも比類なきガーデンとして在りつづけているのだと実感した次第です。
開園時期や季節のイベント情報は公式サイトをご確認ください。