サグラダファミリア(Basílica de la Sagrada Família)のファサードのひとつ「受難のファサード」を写真を交えて振り返ります。
受難のファサード Façana de la Passió
サグラダファミリアの西面。
「イエスの昇天」を描いたファサード、受難のファサード(Façana de la Passió)。
サグラダファミリアで2つ目に完成したファサードは、石工の彫刻だけでなくコンクリートも駆使されています。
カタルーニャ出身の彫刻家Josep M. Subirachs(ジョセップ マリア スビラックス)の指揮により完工した受難のファサードは、反対側の生誕のファサードとは大きく印象が異なります。
生誕のファサードは曲線と細かな凹凸が多く優美で繊細な印象を与えるのに対し、受難のファサードは直線が多く無骨で堅牢な印象を与えます。
「イエスの昇天」を描いた物語は左下から始まり、逆S字を描くように場面が進んで行きます。
受難のファサードの見どころ
下段:最後の晩餐-ピラトの判決 | 1.最後の晩餐 The last supper |
2.イエスの捕縛 The arrest of Jesus |
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3.ユダの裏切り The betrayal of Judas |
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4.鞭打ち The flagellation |
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5.ペテロの否認 The denial of Peter |
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6.この人を見よ The Ecce Homo |
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7.ピラトの判決 The judgement of Pilate |
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中段:イエスの失墜-聖ロンギヌスの馬 | 8.イエスの失墜 The fall of Jesus |
9.聖顔布を手にする聖ヴェロニカ Veronica with the veil of Jesus |
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10.聖ロンギヌスの馬 Longinus on a horse |
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上段:イエスの服を賭けて遊ぶ兵士たち-十字架降架 | 11.イエスの服を賭けて遊ぶ兵士たち The soldiers playing for the tunic of Jesus |
12.キリストの磔刑 Christ crucified |
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13.十字架降架 The descent from the cross and the entombement |
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14.イエスの昇天 The ascension of Jesus |
下段:最後の晩餐-ピラトの判決
1.The last supper 最後の晩餐
「最後の晩餐」
左手前の人物がイエス キリスト。
見学エリアの死角になっているため、十二使徒の1人1人の表情をしっかりと見ることは叶わない。
2.The arrest of Jesus イエスの捕縛
「イエスの捕縛」
イエス キリストを捕らえるために並ぶ兵士たち。
3.The betrayal of Judas ユダの裏切り
裏切り者の十二使徒ユダがイエスにキスをする場面。
左側の数字のプレートは魔法陣。
縦横斜めにそれぞれ足し算をすると、すべてキリストの享年「33」となる。
4.The flagellation 鞭打ち
鞭打ちを受けるキリスト。
5.The denial of Peter ペテロの否認
「ペテロの否認」
キリストが連行をされる前、ペテロにこう告げていた。
「あなたは私を知らないと3度否認した後に鶏が鳴く」
尋問を受けるキリストの姿を覗き見ていた十二使徒ペトロは、女性から「あなたは弟子である」旨を告げられ「知らない」と3度否認をする。
鶏が鳴き、泣き崩れるペテロ。
左側には鶏の姿がある。
6.The Ecce Homo この人を見よ
イェルサレムの市民にローマ総督ピラトがキリストを見せる場面、「この人を見よ」
7.The judgement of Pilate ピラトの判決
総督ピラトが死刑を下す場面「ピラトの判決」
中段:キリストの失墜-聖ロンギヌスの馬
8.The fall of Jesus キリストの失墜
「キリストの失墜」
9.Veronica with the veil of Jesus 聖顔布を手にする聖ヴェロニカ
右側には、十字架を背負いゴルゴダの丘へ向かうキリスト。
中央にはイェルサレムの聖人ヴェロニカ。
キリストを憐れんだ彼女は、身に纏うヴェールをキリストに差し出す。
額をヴェールで拭った後、ヴェールにキリストの顔が浮かび上がるシーン。
ヴェロニカは伝説的な人物であり、浮かび上がるキリストの顔との比較対象になってしまうため、あえて顔には何も彫られていない。
後方の左側にいる人物は、アントニ ガウディ。
10.Longinus on a horse 聖ロンギヌスの馬
ローマ帝国のケントゥリオ、聖ロンギヌス。
磔のキリストの脇腹に槍を刺した人物。
上段:キリストの服を賭けて遊ぶ兵士たち-十字架降架
11.The soldiers playing for the tunic of Jesus キリストの服を賭けて遊ぶ兵士たち
キリストの服を賭けてサイコロでの遊びに興じているローマ兵士たち。
12.Christ crucified キリストの磔刑
金属製の梁を使用した十字架に磔刑にされたイエス キリスト。
保守派からはキリストが裸で腰巻がない状態であるのはおかしいと度々批判が上がっている。
13.The descent from the cross and the entombement 十字架降架
磔刑により亡くなったキリストを十字架から降ろす「十字架降架」
右側に見えるキリストの足を摑んでいる人物は彫刻家のスビラックス。
The ascension of Jesus キリストの昇天
上部の橋の部分に描かれた「キリストの昇天」
おわりに
繊細で優美な「生誕のファサード」と対象的な「受難のファサード」。
評価は二分しており、受難のファサードの建築当時からスビラックスが亡くなった現在も、批判的な論評が少なくないようです。
一介の観光客の感想文に過ぎませんが、生誕のファサードの彫刻家 外尾悦郎さんの著書『ガウディの伝言』、2015年に放映されたドキュメンタリー映画『創造と神秘のサグラダ・ファミリア』を鑑賞した自分としては、受難のファサードには「安易な」印象を抱いてしまいました。
「9.聖顔布を手にする聖ヴェロニカ」の場面で一番左に現れるガウディ。
自分が生きている間にサグラダファミリアが完成しないことを分かっていたガウディが、どうしてこの場面にいるのか。
ローマ兵士の兜は、ガウディ建築の傑作「カサミラ」の煙突部のデザインを踏襲しています。
オーディオガイドの解説では「スビラックスがガウディに敬意を表して」と説明がありましたが、カサミラはカサミラであり、カサミラのデザインに乗っかっている感じが、逆にチープに感じてしまう。
そして「13.キリスト降架」の場面でさりげなく登場する、彫刻家のスビラックス。
「なぜ?」と思わずにはいられませんでした。
二世紀を跨いだ巨大建造物が完成する頃に。
訪問時に抱いた印象は大きく変わるのか、変わらないのか。
その点も含めて、いつかの来たる完成の日を楽しみに待ちたいと思います。
サグラダファミリア 生誕のファサード Façana del Naixement