台湾・台南市の古都、安平(Anping)。
開港後に安平で貿易を行っていた外国商社の德記洋行と、ガジュマルで侵食された異空間の安平樹屋を訪れました。
德記洋行
アヘン戦争(1840〜42)で英国、アロー戦争(1856〜60)で英仏連合軍に敗北した清朝は、天津条約締結により台湾にある複数の港の開港を迫られます。
1865年1月1火開港した安平には次々と外国商社が次々と設立され、その中のひとつが德記洋行です。
現在は資料館になっており、安平地区の歴史、外国商社の歴史が展示されています。
安平開港後に設立された5つの外国商社。
徳記洋行(Tait & Co.) | イギリス |
和記洋行(Boyd & Co.) | イギリス |
怡記洋行(Bain & Co.) | イギリス |
唻記洋行(Wright & Co.) | アメリカ |
東興洋行(Julius Mannich & Co.) | ドイツ |
昔の徳記洋行。
アーチ型の回廊や屋根まで、当時の建物が今も綺麗に残っている。
建物の向こう側はすべて海に面していたことが把握できます。
清国が輸出していた商品の箱。
商品名はFormosa Ooloong、Formosa Teaなど。
当時欧州では台湾を「Formosa」と呼んでいました。
日清戦争(1894〜95)後の下関条約(1895年)により、台湾は日本の統治下に。
日本の統治が始まってからアヘンが日本の専売特許になると、外国商社は次々と安平を離れます。
台湾が日本の植民地だった1923年、德記洋行のFormosa Oolong Teaの広告。日本の雑誌に掲載されたとあります。
上記広告の末尾に記載の商社は、ジャーディン マセソン(Jardine, Matheson & Co., LTD.)、Carter, Macy & Co., Inc.、野澤組(Nozawa & Co.)、三井(Mitsui & Co.)、和記洋行(Boyd & Co.)、徳記洋行(Tait & Co.)。
開港から約60年経過し、商社のラインナップもかなり様変わりしています。
アヘン戦争のきっかけとなる阿片の吸引道具。
阿片はケシの汁を原料とした麻薬で、鎮痛剤としても使われていた。
繁体字では「鴉片」と書くようです。
イギリスの植民地であるインド産アヘンの輸入(イギリスの三国貿易)で、清国の国民は疲弊。
アヘンの輸入・取り締まりを強化したところ、それを口実に戦争を仕掛けられる…というのは。
おや、誰か来たようだ。
アヘンの吸い方の図示を見るだけでも相当な廃人感が漂ってます。
安平樹屋 Anping Tree House
德記洋行の裏手にある倉庫、安平樹屋(Anping Tree House)。
日本統治時代には大日本塩業株式会社安平出張所の倉庫、台湾に戻ってからは台湾製塩総廠の倉庫として使われていた建物。
倉庫が別の場所に移転してからは荒廃し、やがてガジュマルが侵食。
「荒れ果てた歴史ある倉庫に侵食したガジュマル」という、他に類を見ない独特の世界が形成されています。
倉庫として利用されていた場所ということもあり、広さは1,400坪(=約4,630㎡)と広大。
テーマごとにパネルの展示があり、とりわけ興味深いのは1652年当時の安平のマップ。
黄緑色で塗られた箇所は1652年当時の陸地部分。
当時は湾になっていた台江内海の広さが伝わってきます。
オランダが築いたゼーランディア城(熱蘭遮城、現:安平古堡)とプロヴィンティア城(普羅民遮城、現:赤崁楼)が台江内海に面しているのも一目瞭然です。
日清戦争が開戦となる1894年当時のマップ。
日本の攻撃からから台湾を守るために清朝が建築した二鯤鯓炮台の姿も。
安平樹屋の北側にあるスカイブリッジ(Sky Bridge)から望む北側の眺望です。
安平樹屋・德記洋行のチケット料金・入場料
Adult | 50NT$ |
Discount(学生) | 25NT$ |
6才未満 | Free |
営業時間:8:30〜17:30
安平樹屋・德記洋行の場所・行き方・アクセス
台南中心部から安平樹屋・德記洋行へ行く手段は、路線バスまたはタクシー。
路線バスの場合、
- 路線バス2番線
- Taiwan Trip88番線(安平線)
- Taiwan Trip99番線(台江線)
に乗車し「安平古堡(安北路)」停留所までアクセスできます。
バス停から安平樹屋・德記洋行までは徒歩2分です。
バスの料金は片道18NT$。
旧英国領事館の場所は現在陸上グラウンドになっていました。
安平の今昔の違いを眺めつつ、歩いてみるのも面白いと思います。
おわりに
ガジュマルが絡みついた歴史ある倉庫をあえて補修せず、思い切ってそのまま観光地化してしまうというアイデアが面白い。
長い年月を経ないとあれだけのガジュマルは育ちませんし、何よりも台南の歴史を共に歩んできた歴史ある倉庫という点において真似しようにも真似できない。周囲にある安平古堡や億載金城とは違う切り口で楽しめます。
400m西にある夕遊出張所もあわせてどうぞ。