シンガポールの中央部にある、シンガポール国内で最も標高が高い丘「ブキッティマ(Bukit Timah)」。
その丘の南側に、2011年までマレーシアとシンガポール南部を結んでいたマレー鉄道KTMの廃駅ブキッティマ駅(Bukit Timah Railway Station)と線路の一部が遺っています。
ブキッティマ駅 Bukit Timah Railway Station
マレー半島を縦断する、マレー鉄道KTM。
1965年にシンガポールがマレーシアより独立したことにより「マレー鉄道KTMがシンガポール国内のマレー鉄道の駅を所有している」という「ねじれ」が起こっていました。
その後、シンガポールがKTMからマレー鉄道の敷地を買い取る運びとなり、2011年6月30日を最後にシンガポール国内「Woodlands – Bukit Timah – Tanjong Pagar」の路線は完全に廃止に。
以降、その区間にあるシンガポール中央部のブキッティマ駅(Bukit Timah)とシンガポール側の始発駅であるタンジョンパガー駅(Tanjong Pagar)は廃駅となり、その廃止された区間の線路は、一部を除いて剥がされました。
シンガポールに遺るマレー鉄道の廃駅 タンジョンパガー駅|Former Tanjong Pagar Railway Station
ブキッティマには今でも陸橋と線路の一部が遺っており、多くの人々が行き交っていたであろう当時の情景を偲ばせます。
東京23区程の敷地面積ながら、経済力を糧に目覚ましい発展を遂げてきた金融都市、シンガポール
駄目だったら壊して、新しくする。
既得権益で雁字搦めの日本では考えられないような、急速な新陳代謝が行われているシンガポール。
その中で、これほどまでに「時が止まった」場所があるでしょうか。
マリーナベイまでは、直線距離でたったの10km弱。
たくさんの観光客で賑わうマリーナベイの騒がしさが別世界のような、静けさ。
かろうじてアルファベットを視認できる、朽ち果てた駅の看板。
南側はシンガポールの始発駅タンジョンパガーを示す「Singapore」の文字。
北側はマレーシアとの国境、ジョホール水道前の鉄道駅「Woodlands」の文字が残ります。
金属という金属の表面は、すべて錆びに錆びている。
現在、マレー鉄道旧シンガポール始発駅の「タンジョンパガー(Tanjong Pagar)」から「ブキテマ(Bukit Temah)」付近の約24kmは、「Rail Corridor」という名称のウォーキング&サイクリングロードに生まれ変わりました。
時折、自転車をこぎ進む人も見受けられました。
その姿から、亜熱帯のスコールの洗礼を受けたと思われます。
この先を進むとタンジョンパガー旧駅に辿り着く。
Rail Corriderの区間には「78種類の鳥」と「48種類の蝶々」が生息しているそう。
以前、わたしはセントーサ島のシロソスカイウォークでキタカササギサイチョウを目撃した経験があります。
鬱蒼とした木々の上を見上げてみると、もしかしたら珍しい鳥に出会えるかもしれません。
マレー鉄道の廃線跡と陸橋
ブキッティマ駅の北側にある旧マレー鉄道の陸橋。
相当な年月の経過を感じさせる、緑色の苔がこびり付いた物々しい雰囲気の鉄の塊。
マレー鉄道の廃駅 ブキッティマ駅の場所・行き方・アクセス
廃駅と廃線路のあるブキッティマの最寄駅は、地下鉄MRTダウンタウンライン(Down Town Line)DT6のキングアルバートパーク駅(King Albert Park)。
上の写真の右側の道路に架かる橋が、旧マレー鉄道の陸橋です。
King Albert Park駅の、A出口またはB出口からすぐ。
駅の近くから陸橋までショートカットでアクセスできる畦道がありますが、旧な上に泥が酷いため迂回するルートを推奨します。
おわりに
近代的な建築物が増えているシンガポールの中でも、ノスタルジーを感られる古めかしさからか。
ポートレート撮影のスポットとしても、地味に人気を集めているようです。
すでにこの周辺も再開発の予定があり、数年後にはまったく別の雰囲気になっているはず。
どのように変化するかの期待とともに、変わってほしくない複雑な気持ちもあります。
アール・デコ調のファサードが荘厳な雰囲気を漂わせるタンジョンパガー旧駅については、下記の記事をどうぞ。
シンガポールに遺るマレー鉄道の廃駅 タンジョンパガー駅|Former Tanjong Pagar Railway Station