解体か、維持か。
北海道100周年を記念して建築されたモニュメント、北海道百年記念塔(Centennial Memorial Tower)を訪問。
北海道百年記念塔 Centennial Memorial Tower
札幌市の東部、厚別区の高台に鎮座する巨大なモニュメント、北海道百年記念塔(Centennial Memorial Tower)。
明治2年(1869年)8月15日政官布告「蝦夷地自今北海道ト被稱十一ヶ国ニ分割國名郡名等別紙之通被仰出候事」により、蝦夷地は「北海道」と改められます。
北海道百年記念塔はその名を冠する通り、「北海道」誕生100年を記念して、1968年に着工・1970年に竣工しました。
北海道百年記念塔の意義・概要
北海道を築いてきた先人の苦労に感謝し、未来への発展を象徴するものとして、北海道百年記念事業として建築。
平面的には六角形を象っており、雪の結晶を表現。
立体的には等差数列・二次曲線と用いて未来への発展を描いています。
北海道百年記念塔の高さは100m。
鉄骨トラス構造・地上25F建。
総工費4億5,000万円の内、その半分を超える2億5,000万円は北海道民の寄付によるもの。
設計はコンペが行われ、70件以上の応募の中から選ばれたのは、久米建築事務所の井口健氏による案。
設計理念とコンセプトの詳細は、北海道開拓倶楽部による井口健氏への取材記事をご覧ください。
www.hokkaidokaitaku.club/100nenkinento/100neto/iguchi_ken1.html
建築美・コルテン鋼
外壁は、コルテン鋼。
別名「耐候性鋼」の通り、表面に保護性の錆を生成することにより、内部への腐食を防ぐ仕組み。
錆が錆を防ぐマテリアル。
コルテン鋼は、耐久性のある機能面だけでなく、経年変化により風合いが変化するデザイン性も併せ持ちます。
当初は黄土色だった色は、保護錆が馴染むことで黒褐色に。
北海道百年記念塔の色味の変化は、新日鉄住金(Nippon Steel)の公式サイト・カタログで確認できます。
www.nipponsteel.com/product/plate/list/04.html
総面積2,053haにも及ぶ野幌森林公園の広大な森を背に、天高く伸びる黒褐色の塔。
森と一体になった良い意味での不気味ささえも、荘厳であり、美しい。
凛とした佇まい。
解体
さて、その北海道百年記念塔には「解体」の二文字が間近に迫りつつあります。
コルテン鋼の腐食が進み、部材への穴あきが見られるため、2014年から立ち入り禁止に。
さらに2018年には、台風により部材が落下。
北海道の試算では、今後50年における維持管理費として、8Fの展望室の立ち入りを残す場合は28億6,000万円、モニュメントとしての維持は26億5,000万円。
一方、解体の場合は4億1,000万円。
個人的には、解体はもったいない。
北海道百年記念塔に限った話ではありませんが、歴史はお金で買えないのです。
赤れんが庁舎に入場料を新設したり、他の観光施設の入場料を上げるなどして、何とか賄えないものでしょうか。
まずもって、日本の観光施設は入場料が安すぎますので。
仮に維持する場合、8Fの展望室は不要です。
地上からでも十分に眺望は楽しめるし、札幌市内には藻岩山やさっぽろテレビ塔、JRタワー札幌などの展望施設はいくらでもある。
仮に補修して展望室への入場料を取るようにしても、展望室そのものが狭すぎるため厳しいでしょう。
現在は、解体して新しいモニュメントの建設を予定しているようです。
ただし、「観光施設として誰からどのように入場料等を徴収し利益をあげていくのか」綿密に計画しなければ、「50年後に再び同じ歴史を繰り返す」ことは火を見るよりも明らかです。
単なる展望施設を作るだけでは厳しいでしょう。
地球の裏側から十数時間のフライトを経て北海道に来る旅行客が、何を求め、何を体験したいのか。
佐藤忠良氏のレリーフ『開拓』。
支笏洞爺国立公園の恵庭岳。
新さっぽろ駅前のホテルエミシア札幌。
烏帽子岳、百松沢山。
沈む夕日。
北海道の歴史を表現した曲線の向こうに。
マジックアワーの空と、手稲山、JRタワー札幌。
円山方面。
札幌プリンスホテルの姿も。
北海道百年記念塔の場所・行き方・アクセス
マップコード:139 180 420
JR函館本線「森林公園」 から、徒歩20分
札幌市営地下鉄東西線「新さっぽろ駅」からバス乗車約20分
北レーン10乗り場より JR北海道バス【新22「開拓の村」】