イスラム教徒が統治していたナスル朝時代、隆盛を極めたグラナダ王国。
その王朝下で、王の居城と行政を司っていたアルハンブラ宮殿の心臓部、ナスル宮殿(Palacios Nazaríes)へ。
ナスル宮殿 Palacios Nazaríes
13世紀にグラナダ王国(The Emirates of Granada)ナスル朝が誕生してしばらく、王の住居は要塞のアルカサバにありました。
王の住居であるナスル朝宮殿(Palacios Nazaríes)はユースフ1世の治世(在位1333-54)に築城が始まり、ムハンマド5世の治世(在位:1354-59、1362-91)にの完成を迎えます。
ナスリ宮殿の内部は3つの宮(メスアール宮、コマレス宮、ライオン宮)に分かれており、大小様々な中庭、部屋があります。
繊細な装飾が施された半円のアーチをくぐるたびに、栄華を極めたグラナダ王国ナスル朝の世界へと引き込まれてゆくでしょう。
メスアール宮(黄色)、コマレス宮(赤)、ライオン宮(緑)、リンダラハ(青)。
メスアール宮 Mexuar
メスアールの間 Sala del Mexuar
柔らかな光が届く細い通路を抜けると、メスアール宮(Mexuar)の内部へ。
メスアールの間(Sala del Mexuar)はナスル宮殿の中で最も古い部分であり、別名「裁きの間」、法廷として機能していた部屋です。
メスアールの間では、イスラムの幾何学模様のタイルとキリスト教のシンボルの組み合わせを見ることができます。
こちらはカルロス1世(神聖ローマ皇帝カール5世)のモットー「Plus Vltra(さらなる前進)」。
現在のスペイン王国国旗にも見られます。
控えめながらも、きらきらと光を反射させている、美しい壁面の幾何学模様タイル。
中心部には、神聖ローマ帝国の紋章「双頭の鷲」。
異なる宗教のシンボルが混在する、不思議な空間。
この場で抱いた心情は、同じくスペイン南部の都市コルドバのメスキータで覚えた感覚にも似ています。
メスアールの祈祷室 Oratorio del Mexuar
メスアールの間の北側にある祈祷室(Oratorio del Mexuar)。
小さなアーチの向こうに見えるのは、アルバイシン地区。
壁のアラベスクの中に見られる「神のみが勝利する」の文字。
メスアールの中庭 Patio del Mexuar
馬蹄形のアーチをくぐり、中央部に小さな噴水のあるメスアールの中庭(Patio del Mexuar)へ。
中庭の北側にある細長い小部屋、金の部屋(Cuarto Dorado)。
金の部屋の美しい袖壁のタイルの向こうには、アルバイシン地区。
正方形でも4×5でも、綺麗に撮れる場所です。
ぜひ、HDR撮影で。
コマレス宮 Comares
アラヤネスの中庭 Patio de Arrayanes
コマレス宮殿(Comares)のパティオ、アラヤネスの中庭(Patio de Arrayanes)へ。
池の水面に反射する、リズムよく連なるアーチとマートル(Arrayanes)の生垣。
シンメトリーな美しい構図です。
大使の間 Salón de Embajadores
コマレスの塔の内部、大使の間(Salón de Embajadores)。
アルハンブラを訪れた来賓者が通された部屋です。
広い部屋に入り上部を見上げると、杉の木で作られた天井が見えます。
思わず、口を開けながら見入る。
かつてアルハンブラを訪れた来賓も、同じような面もちで天井を見上げていたのでしょうか。
ライオン宮 Leones
ライオンの中庭 Patio de los Leones
ライオンの中庭(Patio de los Leones)。
スペイン南部アルメリア産の124本の大理石の柱が並ぶ空間です。
中央部には12頭のライオンの噴水があります。
アベンセラッヘスの間 Sala de las Abencerrajes
ライオンの中庭の南側に位置する、アベンセラッヘスの間(Sala de las Abencerrajes)。
壁面の細かな装飾と鍾乳石飾りの天井部が美しい。
上部の小窓からは、部屋全体に柔らかな光を届けています。
この部屋には、貴族の勢家だったアベンセラッヘス家の男性複数人が斬首されたという伝説があります。
斬首された人数は伝説により「8人」や「36人」などバラバラですが、その血は部屋の中央部のプールから水路を伝わり、ライオンの噴水まで流れたのだとか。
二姉妹の間 Sala de las Dos Hermanas
精微につくられた鍾乳石飾りの天井部が美しい、二姉妹の間(Sala de las Dos Hermanas)。
アベンセラッヘスの間よりも、作りがより精巧に感じられます。
装飾の美しさという観点でみれば、ナスル宮殿で最も美しい場所だと感じました。
諸王の間 Sala del Rey
ライオンの中庭の東側に位置する、諸王の間(Sala del Rey)。
細長い王の間は3つの空間で構成されており、その空間を繋ぐ「アーチ型の仕切りの連続」が美しい。
諸王の間の北側にあるアーチの小窓から、サクロモンテ洞窟博物館を望む。
諸王の間のヴォールトには3つの絵画が残されており、中央部の絵画にはナスル朝の歴代スルタン10人が描かれています。
現地で借りたオーディオガイドの解説によれば「子羊の皮に描いた」とのこと。
リンダラハのバルコニー Mirador de Lindaraja
二姉妹の間の北側にあるリンダラハのバルコニー(Mirador de Lindaraja)。
うっとりとする程に、繊細な装飾。
バルコニーの向こう側は、オレンジの実が生るリンダラハの中庭です。
壁面のアラベスクに見とれながら視線を少しずつ上に上げていくと、天井部にステンドグラスを見つけました。
やがて上部から光が差し込み、目線をおろしてみると、バルコニーの壁にはカラフルな光のアクセントが映し出されていました。
初夏のスペイン南部。
リンダラハのパティオに生るオレンジが、写真に季語を添えてくれます。
ナスル朝宮殿の見学はここまでです。
リンダラハの中庭のベンチに腰掛け、心地よい噴水の音を聴きながらひと休みしましょう。
ナスル宮殿の場所・行き方・アクセス
アルハンブラ宮殿の予約方法については下記記事にまとめています。
» 3ヶ月前に予約推奨!アルハンブラ宮殿の予約方法 チケットの種類と価格一覧
アルハンブラ宮殿の軍事要塞アルカサバ(グラナダ)|Alcazaba
アルハンブラの離宮 ヘネラリフェ(グラナダ)|Generalife